愛書家日誌

- a bibliophilia journal -

電子書籍の歴史 その1ー 本とテクノロジーの出会い

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夜明け前:本とテクノロジーの出会い

15世紀半ばにグーテンベルク聖書が出版されると、本は私たちの知っている本になりました。それ以来、約500年の間その姿を変えずに現在まで続いています。

その間、人類は読書という行為にさまざまな形でテクノロジーの導入を試みました。記録にのこる最初の試みは16世紀になります。私たちの祖先はテクノロジーで読書の何を変えようとしたのでしょうか?

1588年 : ラメッリの回転式書見台  

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回転式書見台はイタリアの軍事技術者、アゴスティーノ・ラメッリによって考案されました。水車のように回転する書見台は、読者の前にくると読むのにちょうどいい45度の傾きを保ちます。当時の本はとても大きく、重かったので扱いが不便でした。そしてラメッリの時代には次々に本が出版されはじめたのです。

力をつかうことなく一箇所で複数の本を参照できるこの機械は大変便利だったでしょう。またさまざまな情報源を蓄積し、参照しながら読むという行為は現代のハイパーテキストにつながる新しい知識探求方法の始まりでもありました。

1890年 : ホロウェイの安楽読書椅子 

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1890年にオハイオ州のホロウェイ・カンパニーは安楽読書椅子の特許をとります。辞書のホルダーと書見台、書き物机とランプが一体になったデザインでした。読書に必要なのは灯りだけでなく、辞書を引くこととメモをとること、そして安楽な姿勢を保てることだったのです。

そしてそれらを一箇所でできるだけ移動せずに行える点が重要でした。現在の電子書籍でも辞書やメモの機能がついていますね。今では安楽な姿勢はさらに進化してベッドに寝転がったままでもよくなりました。

ホロウェイ・カンパニーは何年もの間、この機械の改良を続けました。その結果に自信があったのでしょう。「地球上のすべての国で毎日使われている」とカタログには書かれています。

本好きのために6巻セットのニュー・センチュリー・ディクショナリーをすべて収めることができるセンチュリー・ディクショナリーケースという付属品も用意されていました。

#こちらに当時のカタログがあります。

1922年 : フィスクの読書機械

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この機械のお話は以前の記事にあります。

1935年 : マイクロフィルム・ブックリーダー

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エブリディ・サイエンス・アンド・メカニックスの1935年4月号に面白い記事が掲載されました。本はマイクロフィルムで保存されるというのです。この機械はスクリーンに写った本の写真を見るようにデザインされています。手元にはページ送りボタンとフォーカスの調整ボタンがあり、スクリーンの角度も変えられます。

1859年にルネ・ダグロンがマイクロフィルムの最初の特許をとりました。そして1925年にはニューヨークの銀行家のジョージ・ルイス・マッカートニーがマイクロフィルムにおさめた銀行の書類を読むための最初の実用的な機械を開発しています。

1928年にイーストマン・コダックがその発明を買うとテキストを縮小するというアイディアは広がり始め、1935年にはニューヨーク・タイムズが誌面をはじめてマイクロフィルム化します。そうした流れの延長でこの機械は構想されたのでしょう。

本を小さくしたいという望みは現代まで続き、電子書籍がそれを実現したのではないでしょうか?電子化により、巨大だった本はついに質量をなくしてしまったのでした。

 

今日のところはここまでで筆をおきたいと思います。まだまだ1935年。現代にたどり着くのはいつになることやら。